真空ボイラーの温度が上がらない原因は?原理・構造をわかりやすく解説

「ボイラーは燃えているのに、お湯の温度がなかなか上がらない」

そんな症状に直面したことはありませんか?

真空式温水ボイラーは、真空状態と媒体水の蒸発・凝縮による間接加熱で温水をつくる特殊な構造を持っています。

このため、内部で真空度が不足していたり、媒体水に異常があると、温水の温度が上がらない、あるいは上がりにくくなることがあります。

この記事では、真空ボイラーの基本構造や「温度が上がらない」ときの原因を丁寧に整理します。

さらに、現場で確認すべきチェックポイントや、業者への点検依頼の目安も紹介します。

再加熱が多い、湯温が安定しないなどの違和感がある場合には、ぜひ最後までお読みください。

目次

真空ボイラーとは?|原理と構造の基礎知識

真空ボイラー(正式には「真空式温水ボイラー」)とは、大気圧以下の負圧状態(真空)を利用して温水を加熱する方式のボイラーです。

一般的なボイラーのように「直接水を加熱する」のではなく、真空状態で蒸発する“媒体水”の蒸気熱を使って、温水を間接的に加熱します。

基本構造

真空ボイラーの内部は大きく3つのエリアに分かれています:

  • 燃焼室:バーナーで燃料を燃やし熱を発生させる
  • 媒体水エリア:真空下で蒸発・凝縮を繰り返す
  • 熱交換器:蒸気熱を使って温水ライン側に熱を渡す

この内部構造が真空状態に保たれていることで、媒体水は100℃未満(例:70〜80℃)でも蒸発でき、その蒸気の凝縮によって効率よく温水を加熱することができます。

真空引きとは|真空ボイラーにおける抽気とポンプの役割

真空ボイラーでは、内部を大気圧よりも低い「真空状態」に保つことが非常に重要です。

この状態があるからこそ、媒体水は100℃以下でも蒸発し、効率よく温水を加熱できます。

この真空状態を作り出し、維持するのが「真空引き(しんくうびき)」と呼ばれる工程です。

運転開始時に真空ポンプがボイラー内部の空気を強制的に排出(=抽気)することで、内部圧力を下げて真空環境をつくるのです。

真空ポンプはこの「真空引き」だけでなく、運転中も常にわずかな空気混入を排出し続ける役割を担っています。

そのため、ポンプの故障や抽気ラインの漏れがあると、真空が保てなくなり、媒体水がうまく蒸発せず、温度が上がらない・再加熱が多いといったトラブルにつながります。

真空ボイラーの温度が上がらないときに疑うべき主な原因

真空ボイラーで温度が上がらない原因は、ひとつではありません。

燃焼が正常でも、真空状態が崩れていたり、媒体水や熱交換器に異常があると、温水の加熱がうまくいかなくなります。

ここでは主な原因を整理してご紹介します。

真空度が不足している

1つ目は真空度の不足です。

真空ボイラーの内部は、常時-0.1MPa近い真空に保たれる必要があります。

しかし、真空ポンプの不具合や、空気抜き装置の異常、何かしらの空気混入などがあると、真空度が不十分になり、媒体水が蒸発しなくなります。

媒体水が蒸発していない

2つ目は、何らかの理由で媒体水が蒸発しないケースです。

真空度が保たれていても、たとえば媒体水そのものが不足していたり、劣化していると、蒸気を発生できず熱交換が成立しません。

また、媒体水が過剰に循環している場合も、熱が吸収されにくくなることがあります。

媒体水の異常が起こるケースとは

媒体水は、「加熱→蒸発→凝縮→再加熱」を繰り返しながら、真空缶の内部で密閉循環する仕組みになっています。

そのため原則として、外部からの混入や漏れがない限り、量が減ったり劣化したりすることはありません。

しかし、稀に以下のような例外的なケースでは、媒体水の状態が変化し、加熱効率に影響を及ぼすことがあります

  • 長年使用したことによる内部部品(銅管や熱交換部)の腐食やスラッジ混入
  • 点検時の誤操作による一般水の注入や、空気混入による性状変化
  • 真空度低下や圧力不均衡により、蒸発が不安定になる現象

これらの影響により、媒体水の蒸発効率が下がり、結果的に温度が上がらない/再加熱が増えるといった現象につながることがあります。

熱交換器の異常

3つ目は熱交換器の不具合です。

蒸発した媒体水の蒸気は、熱交換器を通して温水に熱を渡します。

しかし、熱交換器にスケールが溜まっていたり、水路が詰まっていると、熱が伝わらず温水温度が上がりません

設定やセンサーの問題

4つ目は周辺機器の不具合です。

サーミスタ(温度センサー)の異常や、制御盤側の温度設定ミスでも、加熱制御がうまく働かなくなります。

思わぬところで「設定温度が低すぎる」「センサーの数値がズレている」といった事態も少なくありません。

現場でできるチェックポイント|初動対応の流れ

温度が上がらないと感じたとき、すぐに業者を呼ぶ前に現場でできる確認ポイントをチェックしましょう。

真空度の確認(最重要)

制御盤または機器本体の真空計を確認し、-0.1MPaに近い値が出ているか確認してください。

0に近づいている場合、真空漏れやポンプ不良が疑われます。

媒体水の量・色・異常の有無

媒体水の量・色・異常の有無を確認しましょう。

点検窓や圧力リリーフで媒体水の減少・濁り・泡立ちなどがあれば、劣化や量不足の可能性があります。

再加熱の頻度チェック

制御盤の運転ログや使用温度に対して、再加熱(バーナーON)頻度が高すぎないかを確認します。

頻繁に再加熱している場合は、熱が逃げている証拠です。

空気抜きバルブやポンプの作動音

空気抜きバルブやポンプの作動音に異音がないか確認しましょう。

小さな“ゴボゴボ音”や“バリバリ”という異常音が聞こえる場合は、キャビテーションの兆候かもしれません。

修理が必要か迷ったら?点検・依頼の判断基準

以下のような状態がある場合は、自力での復旧が難しく、業者への点検依頼が必要なレベルです。

  • 真空度が明らかに低い(−0.05MPa以下など)
  • 媒体水が劣化しており、色やにおいに異常がある
  • バーナーのON-OFFが極端に多く、温度が安定しない
  • 熱交換器の効きが悪く、湯温が上がらない/戻り温度が低い

とくに「燃焼はしているが温度が上がらない」という現象が続いている場合、内部の部品劣化や媒体水の入替、真空ポンプ交換などが必要な可能性があります。

真空ボイラーの異常は早期発見がカギ|修理相談は坂口ボイラーへ

真空ボイラーの構造は一見シンプルですが、真空・媒体・熱交換のバランスが崩れると、温水がうまく加熱されず、再加熱の増加・エネルギーロス・設備負荷の上昇といった問題につながります。

業務用ボイラーで「温度が上がらない」「故障の原因がわからない」といったときは、お気軽にご相談ください。

業務用ボイラーの専門業者として、真空ポンプの修理・媒体水の入替・熱交換器の復旧など、設備ごとの最適な対処方法をご提案いたします。

地元で40年以上の実績を持つボイラー専門のプロが、業務用設備の点検・修理に対応しております。

現場を見て判断してほしい、急ぎで復旧したいなど、お困りの際も迅速に対応いたします。

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