温水ボイラーの圧力低下の原因は?宿泊施設・介護施設オーナー向けにわかりやすく解説

宿泊施設や介護施設の運営では、暖房や給湯の安定が施設全体の安心・快適さに直結します。

その中心にあるボイラーで「圧力低下」が発生すると、暖房停止やお湯が出ないといったトラブルを招き、利用者に迷惑をかけかねません。

特に小規模施設では、設備担当者が兼務で運営していることも多く、初動を間違えると修理費用や休業リスクが大きく膨らみます。

本記事では、昭和鉄工のSADシリーズやCVシリーズの温水ボイラーを念頭に、圧力低下の仕組み、原因、確認すべきポイント、業者依頼の目安までをわかりやすく解説します。

目次

圧力低下とは何か?仕組みとリスク

温水ボイラーにおける「圧力」とは、密閉回路内の水(または不凍液)を加熱し、循環させるために必要な力を数値で表したものです。

昭和鉄工の鋳鉄式温水ボイラー(SADシリーズやCVシリーズなど)では、一般的に0.5〜1.0MPa前後で運転が安定しています。

圧力が正常範囲より低下すると、熱の伝達効率が落ち、暖房や給湯能力が低下します。

圧力低下が進むと、ポンプの空転、異音、設備の早期劣化、最悪の場合は運転停止に至ることもあります。

特に小規模の宿泊施設や介護施設では、少しの圧力低下が大きな支障を招くリスクがあります。

例えば「暖房が効かない」「お湯がぬるい」「パネルヒーターの一部が冷たい」といった症状は、圧力低下の初期サインのことがあります。

この段階で正しく原因を切り分け、適切な対応を取ることが、施設運営において極めて重要です。

また、密閉式ボイラーでは内部圧力を保つことで、外気や空気が混入しない構造になっています。

圧力低下が起きているということは、この密閉状態がどこかで崩れているサインでもあります。

ボイラーの圧力低下の原因5選と対策のヒント

エア噛み(空気混入)

密閉回路であっても、補水や保守作業の後に空気が混入することがあります。

エアが回路内に入ると、熱が伝わらず圧力が不安定になり、ポンプが空転することも。

昭和鉄工のCVシリーズのような真空式はエア混入に強いですが、完全に無縁ではありません。

対策のヒント

保水後や保守後は必ずエア抜きを実施し、圧力計を再確認。

パネルヒーター末端のエア抜きバルブも定期点検しましょう。

不凍液・温水の漏れ

配管接続部、パネルヒーター周辺、床下のジョイント部などから微細な漏れが発生すると、密閉回路内の不凍液や温水がわずかずつ失われ、徐々に圧力が低下します。

これは、密閉式ボイラー回路が限られた体積の液体と気体で圧力を保っているためです。

温水が漏れることで内部体積に対する水量が減少し、その結果、圧力が下がる構造になっています。

漏れ箇所は目視で確認しづらいことがあります。

特に、構造上の理由から床下や壁内、断熱材の内部で長期間見過ごされていた場合、気づいたときには圧力計が大きく低下しているケースも少なくありません。

対策のヒント

ボイラー室周辺・床下・接続部を定期点検。

床下点検口からのぞける範囲も必ず確認。

漏れの疑いがあれば、補水を繰り返さず業者点検を依頼。

膨張タンクの不調

膨張タンクは温水の体積変化を吸収し、圧力を安定させる役割を持ちます。

膨張タンクの内部にはゴム膜(ダイヤフラム)が組み込まれており、温水と空気室を隔てる役割を果たしています。

例えばこのゴム膜が破損していると、空気が温水回路に混入してエア噛みを引き起こし、圧力が低下する原因となります。

膨張タンクの点検も圧力低下時の重要な確認ポイントです。

対策のヒント

タンクの圧力計や水位計を点検。

異常が見られたら専門業者に確認依頼。

スケール堆積・配管詰まり

スケール(カルシウム・マグネシウムなどの堆積物)は熱交換面や配管内壁に付着すると断熱層となり、熱が伝わりにくくなります。

その結果、ボイラーは同じ温水供給を維持しようと燃焼・循環運転に過剰反応し、圧力の急上下波動が起きやすくなります。

また、局所的な過熱による気泡発生が循環系を乱し、圧力計の誤動作や表示不安定にもつながります。

対策のヒント

定期的な熱交換部点検が重要です。

必要に応じて薬注洗浄も検討しましょう。

スケール蓄積を放置すると大掛かりな洗浄・補修が必要になります。

圧力計・センサの故障

実際のボイラー内圧力は正常範囲にあっても、圧力計や圧力センサの誤作動によって「低圧」と誤認され、不要な燃焼停止や安全装置の作動が発生することがあります。

誤作動のよくある具体例としては、次のようなケースが挙げられます:

  • 圧力計の目盛り固着
    長期間の使用で圧力計内部の機械部品が劣化し、指針が0付近から動かなくなる。実際には正常圧でも低圧表示になる。
  • センサ部のスケール・スラッジ付着
    圧力センサの感知部にスケールや汚れが堆積し、正しい圧力が感知できず、低圧信号が送られる。
  • 電気的接触不良
    圧力スイッチの端子や配線の劣化・緩みにより、圧力信号が断続的に途切れ、低圧異常と誤認される。

こうした誤作動が原因で、正常運転中に突然燃焼が停止したり、不要な安全遮断が発生して施設の暖房や給湯が止まることもあります。

対策のヒント

複数の計測値(操作パネル・現場圧力計)を確認し、値に大きなズレがある場合は業者に調整依頼。

圧力計やセンサの調整・交換を検討しましょう。

圧力低下の症状サイン

ボイラーの圧力低下は、設備の異常を知らせる重要なサインです。

特に小規模の宿泊施設や介護施設では、圧力低下が暖房や給湯の停止に直結するため、早期発見が欠かせません。

以下のような症状が見られた場合は、現場でのチェックをすぐに始めましょう。

圧力計の値が急に0付近になる

温水ボイラーの場合、圧力計は温水または不凍液の循環圧を示しています。

圧力計の値の適正範囲は、お使いのボイラーの型式によって異なります。

例えば、昭和鉄工のCVシリーズであれば最高使用圧力は「0.49MPa(〜0.98MPa※導入時の仕様による)」となっています。

もし普段0.3〜0.5MPaで安定していた圧力が、急に0付近まで低下している場合は注意しましょう。

漏れやエア混入、センサ異常など何らかの問題が発生している可能性があります。

補水頻度が増えた

補水の回数や量が増えている場合、どこかで水が失われている兆候です。

補水は、密閉回路内で失われた水や不凍液を規定圧力まで補う作業です。

正常な密閉回路であれば、補水は定期点検時(年1〜2回)に確認する程度で十分です。

しかし頻繁な補水が必要だったり、1回の補水量が増えている場合は、漏れや異常のサインと捉えます。

補水は施設管理者がマニュアルに沿って行うこともあります。

しかし、安全管理の観点からは業者による点検・作業が推奨されます。

ポンプ音に異常がある

ポンプから普段と異なる高い音や振動が出ている場合、内部で空転やエア噛みが発生していることが疑われます。

  • 空転とは:ポンプが水を吸えずに空気だけを巻き込んで動作する状態
  • エア噛みとは:配管内に侵入した空気が循環を妨げ、ポンプの効率を著しく低下させる状態

これらのトラブルが起きると、温水の循環が正常に行われなくなり、回路内で圧力を均一かつ安定に保つことができなくなります。

結果として、ボイラー回路全体の圧力が低下し、圧力計が異常値を示したり、安全装置が誤作動する原因となるのです。

異音や振動は、こうした圧力低下の前兆として現れることが多いため、早期に原因を特定し、適切な対応を取ることが求められます。

パネルヒーターや床暖房の冷え

パネルや床暖房の一部が冷たくなり、部屋全体の暖房効率が落ちている場合、圧力低下が原因で回路内の温水循環が正常に行われなくなっている可能性があります。

密閉式の温水ボイラー回路は、一定の水圧が保たれることでポンプが適切に温水を押し出し、パネルヒーターや床暖房のすみずみまで温水が均等に行き渡る仕組みになっています。

しかし、圧力が低下するとポンプの循環能力が十分に発揮されず、温水が流れにくくなる部分が生じ、結果として特定のパネルや床暖房エリアで熱が届かなくなります。

特に配管の末端や高所部分では、圧力不足が原因でエア噛みや流量不足が起きやすく、暖房ムラの症状として現れるのです。

こうした状態は、放置するとさらに大きな循環不良や設備全体の機能低下を引き起こすため、早急な原因調査と対策が必要です。

現場でできるチェック

現場では、次のポイントを落ち着いて確認しましょう。

項目詳細
ボイラー周辺での水漏れ確認ボイラー本体下部、補水管・排水管の接続部、床下の見える範囲に水たまりや湿り気がないか確認します。
安全弁・補水弁の状態確認安全弁付近に蒸気漏れ跡や水滴が付着していないか、補水バルブに不自然な開閉状態や緩みがないか確認します。
操作パネルのエラー履歴確認低圧、燃焼異常、ポンプ異常といった履歴が残っていないか、エラーコードの内容も記録しておきましょう。これにより業者へ状況説明が正確になります。

現場で得た情報を整理することで、不要な緊急対応を避け、正確な修理判断が可能になります。

圧力低下を放置しない運営管理のコツ

圧力低下は、ボイラーや暖房設備にとって重要なトラブルのサインです。

放置すれば暖房・給湯の停止や、施設運営に大きな支障をきたすリスクがあります。

だからこそ、日常の簡易点検や初期の冷静な対応が重要です。

圧力低下を確認したら、まずは補水・エラー履歴・水漏れの有無などを確認しましょう。

それでも原因が特定できない、補水しても圧力が戻らない、同じエラーが繰り返し出るといった場合には、早めに専門業者へ相談することが大切です。

当社では、小規模宿泊施設・介護施設向けに、各種温水ボイラーの無料初期相談・点検サービスを承っています。

圧力低下に伴う緊急対応から、定期点検・薬注洗浄のご提案まで、安心してお任せください。

ボイラーの圧力低下は、早めのご相談が大きな修理費用を防ぎ、施設の安全・快適さを守ります。

ぜひお気軽にお問い合わせください。

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