給水ポンプの仕組みとトラブル原因|マンション・施設の水圧を守る基礎知識

マンション、クリニック、オフィスビル、商業施設――

どんな建物でも「水を安定して供給する」ための中心を担うのが 給水ポンプ です。

給水ポンプは、建物内のあらゆる蛇口・トイレ・シャワー・機器へ、必要な圧力で水を送り続ける装置

「水が出ない」「圧力が弱い」「異音がする」などのトラブルは、実はこの給水ポンプの仕組みを理解しておくことで原因をイメージしやすくなり、管理判断が格段に楽になります。

本記事では、仕組み・種類・配管の流れ・ユニット型の特徴・よくある故障まで、建物管理者が必ず知っておきたいポイントをまとめます。

目次

給水ポンプとは

給水ポンプとは、水道本管の圧力に加圧して水を届けるためのポンプです。

通常、建物の高さや規模によって、水道本管の圧力だけでは以下のような不具合が起こります。

  • 3階以上:水道本管の圧力では届きにくい
  • 同時使用が多い建物:圧力低下が発生、一部の蛇口で水が出ない
  • 医療・厨房設備:一定の流量が必要、業務機器に支障が出る

このように、水道本管の圧力不足を補うのが 給水ポンプ であり、これにより水を建物内へ「必要な圧力」で届けることが可能になります。

まさに建物の給水インフラの中心となる機器です。

クリニック・中規模施設・マンションでの重要性

クリニック・中規模施設・マンションでは、水圧の安定性確保が重要です。

水圧が安定しないと、施設運営に支障がでます。

  • 利用者に直接不便が出る
  • クレーム・営業停止につながる

このような不利益が起きないように、給水ポンプは日頃から管理されています。

「普段は意識されないが、止まると困る」典型的な設備です。

給水ポンプの内部構造

給水ポンプは、内部で 羽根車(インペラ) を高速回転させて水に遠心力を与え、押し出す仕組みになっています。

通常これは 渦巻ポンプ(うずまきポンプ) と呼ばれる方式で、建物給水で最も一般的です。

渦巻式ポンプ:水を押し出す仕組み

  1. モーターが回転する
  2. 軸につながれた羽根車が高速回転
  3. 羽根車の中心から水を吸い込む
  4. 回転で発生した遠心力で水が外周へ押し出される
  5. 押し出された水が配管へ流れ、圧力が上がる

ポイントは:

  • モーターの回転数が水の勢い(=水圧)に直結している
  • 羽根車が摩耗したり欠けたりすると、水を押し出す力が弱くなる

つまり、羽根車やモーターにトラブルがあると「最近、なんだか水の勢いが弱い…」という症状が現れます。

給水ポンプの“水が弱い”トラブルは、この羽根車の仕組みを知っているだけで原因の想像がしやすくなります。

自吸式と渦巻式の違い

給水ポンプにはいくつかタイプがありますが、建物で使われるものはほとんどが 「渦巻式(うずまき)」 です。

ただ、専門書を読むと「自吸式」という言葉も出てくるので、ここで軽く違いだけ押さえておきましょう。

渦巻き式ポンプ自吸式ポンプ
“ポンプの中が常に満水になっている”ことが前提で動くタイプ。
・中が水で満たされていないと動かない(空気が入るとNG)
・給水配管の途中に組み込んで使うのが基本
・マンションやクリニックの給水ポンプはほぼ全部これ
ポンプの中が空っぽでも、自分で水を吸い上げてスタートできるタイプ。
・ポンプ内に水が入っていなくても動ける
・水面より高い位置にあるポンプでも使える
・井戸や農業用など、「吸い上げる用途」でよく使われる

一般的な建物管理に関わる方は、「給水ポンプ=渦巻式」と覚えておけばOKです。

自吸式の水を送り出す仕組みを具体的に知りたい方は、こちらの動画を参考にしてください。

圧力と流量の考え方

給水ポンプは「圧力(kPa)」と「流量(L/min)」のバランスで成り立っています。

  • 流量:どれだけの水を送れるか
  • 圧力:どれだけの力で押し出せるか

建物管理者が見るのは主に 圧力計(kPa表示)。これが異常値を示すとトラブルのサインになります。

給水ポンプの種類と配水ルート

建物の給水設備は、建物の規模や築年数によって方式が異なります。

しかし「種類の違い」と「水がどう流れるか」を合わせて理解すると、設備の全体像が一気に見えるようになります。

ここでは、マンション・クリニック・中規模施設などで、最も一般的な3方式を整理します。

直結増圧式(増圧ポンプ方式)|近年もっとも普及している方式

出典:神奈川県HP

水道本管から直接建物へ給水し、不足する圧力をポンプで増圧して届ける方式 です。

この方式では、水は水道本管からポンプを経由して直接各階(各部屋)へ流れていきます。

▶ 流れ

水道本管 → 増圧ポンプ(給水ユニット) → 各階・各部屋へ

上階でも安定した水圧を確保できるのが最大の特徴です。

▶ 仕組み

  • インバーター制御で設定圧力を一定に保つ
  • ポンプ2〜3台が交互運転または並列運転
  • 圧力センサーがリアルタイムで水圧を監視
  • 需要に応じて自動的に回転数を調整(省エネ)

▶ メリット

  • 受水槽が不要
     → 衛生面・管理コストの大幅削減
  • 設置スペースが小さい
  • 水圧が安定しやすい
     → 節水シャワーや高層階でも十分な水圧を確保
  • 新築物件で採用が急増
  • バックアップ運転が可能(故障時も安心)

▶ 注意すべきポイント

直結増圧方式には、管理者が特に気を付けたいポイントがあります。

  • 停電時はポンプが止まる=即断水につながりやすい
  • 圧力センサー・インバーターの異常は全体へ影響
  • エア噛み(吸込み側に空気混入)が起きると水が出ない
  • ポンプ停止=全戸断水 のため、日常点検が重要
  • 夜間・早朝のトラブルはクレームにつながりやすい
  • 振動・異音・圧力変動は初期故障のサイン

▶ この方式が選ばれる理由

近年の新築マンション・クリニック・小規模ビルでは、ほぼ直結増圧方式が採用されています。理由は、

  • 設置スペースが小さい
  • 衛生管理がしやすい(受水槽不要)
  • 圧力が安定しやすい
  • メンテ性が高い

このように “現場にとって扱いやすい” 特徴がそろっているためです。

給水ポンプユニットは、直結増圧方式の“進化版”

直結増圧方式では、水道本管の圧力を補うために 増圧ポンプ を使って水を届けますが、その仕組みをより安定的・効率的に実現するために開発されたのが給水ポンプユニット(加圧ユニット) です。

給水ポンプユニットは、

  • 複数ポンプ
  • インバーター制御盤
  • 圧力センサー
  • 逆止弁
  • アラーム監視機能

などがセットになっています。

以前のシンプルな「1台ポンプの増圧方式」と比べると、給水ユニットは 耐障害性も使い勝手も大幅UP

  • 圧力を一定に保つインバーター制御
  • 2〜3台のポンプが交互運転/バックアップ運転
  • 小型・静音・省エネで扱いやすい
  • 故障しても片側が動くため断水しにくい

そのため、新築マンション・クリニック・中規模ビルではほぼ必ず “給水ポンプユニット” が採用されています。

受水槽方式(揚水ポンプ+加圧ポンプ方式)|従来からある一般的方式

出典:神奈川県HP

建物の1階にある 受水槽にいったん水を貯めてから、揚水ポンプで屋上へ運び、高架水槽(または加圧ポンプ)から各フロアへ給水する方式 です。

古いマンション・中規模施設・商業ビルなど、現在も多くの建物で採用されています。

▶ 流れ

水道本管 → 受水槽 → 揚水ポンプ → 高架水槽(または加圧ポンプ) → 各フロアへ

重力を利用して給水するため、ポンプ停止時でも一定時間の給水が可能です。

▶ 仕組み

  • 水道の水を受水槽にためる
  • 揚水ポンプで屋上へ水を押し上げる
  • 高架水槽から重力で建物全体へ給水
  • 圧力が不足する箇所には加圧ポンプを使用
  • 貯留 → 揚水 → 給水の3段階で構成されるシステム

▶ メリット

  • 停電時でも“高架水槽内の水”でしばらく給水できる
  • 水道本管の圧力変動の影響を受けにくい
  • 需要変動に強く、安定供給しやすい
  • 既存設備として多数の建物に採用されている
  • 一部だけ加圧すれば良いため、階層によって柔軟に運用可

▶ 注意すべきポイント(管理者向け)

この方式は歴史が長い一方、管理者が注意すべき点も多い方式です。

  • 受水槽・高架水槽の衛生管理(年2回清掃が義務)
  • 受水槽・高架水槽の劣化が漏水事故の原因になることも
  • 揚水ポンプ・加圧ポンプの老朽化でトラブルが増える
  • 逆止弁・フロート(ボールタップ)劣化による給水不良
  • 高架水槽の水質維持が管理負担になりやすい
  • 大地震などで高架水槽が倒壊するリスク
  • 経年マンションでは「直結増圧方式への切り替え」相談が増加中

▶ なぜ今でも採用されているのか?

受水槽方式は歴史が長く、「停電しても一定時間は水が出る」 という安心感から支持されてきました。

しかし近年は、

  • 貯水槽の衛生面
  • 老朽化によるコスト増
  • 設備管理の手間
  • 高架水槽の耐震問題

これらの理由から、直結増圧方式へ切り替えを行う施設も増えています。

給水ポンプのよくあるトラブル

給水ポンプは “止まると建物が機能しなくなる” 重要設備です。

代表的なトラブルは大きく 5つ に分類できます。

トラブルの原因はほぼ「仕組み上のどこで異常が起きているか」に紐づきます。

① 水が出ない・水圧が極端に弱い

水が出ない・水圧が極端に弱いといった症状は最も多いトラブルです。

原因の例:

  • 羽根車(インペラ)の摩耗・破損
    → 遠心力が弱くなる → 圧力不足
  • 逆止弁が破損し水が逆流
  • エア噛み(吸込み側に空気が入っている)
  • 圧力センサーの不良
  • インバーター不良(出力が安定しない)

ポイント:
「仕組み」を理解していると、どの部分で問題が起きているか推定しやすくなります。

② 異音(ゴーッ・ガラガラ・キーンなど)

異音は“初期症状のサイン”として重要視される症状の一つです。

原因の例:

  • ベアリング摩耗
  • キャビテーション(吸込み不足で泡が発生)
  • 羽根車に異物混入
  • モーター軸の偏芯
  • 逆止弁の振動

放置すると100% 故障につながる症状とされています。

③ 水漏れ(メカニカルシールの劣化)

給水ポンプで水漏れが起きた時、その原因として最も疑われるのが メカニカルシールの寿命です。

メカニカルシールとは

モーター軸と水の空間を密閉する部品。ここが劣化すると“軸から水が漏れる”原因になる。

原因の例:

  • 経年劣化(寿命5〜7年程度)
  • 空運転(エア噛み)で摩耗
  • 異物混入

水漏れは交換のサインです。シール交換、もしくはポンプ交換が必要になることが多いです。

④ 片側のポンプだけ動く(交互運転トラブル)

給水ポンプユニットでは、2台または3台のポンプが「交互運転(A → B → A → B…)」 で動く仕組みになっています。

片側だけが酷使されないようにするための大切な機能ですが

「A側だけがずっと動いている」
「B側が全然起動しない」

という状態になることがあります。

これは、現場でもよくある“交互運転トラブル”です。

原因の例:

  • 片側のポンプに異常(過負荷・漏電)
  • 交互運転リレーの不良
  • インバーターの片側異常
  • 圧力設定の不均衡

現場で原因をたどると、「ポンプ本体が壊れている」というよりは、制御盤のリレー・インバーター・圧力設定 の不具合が多いのが特徴です。

片側が動かない=ポンプが悪いとは限らないということも視野に入れましょう。

なお、放置していると「もう片側」も負荷がかかり故障しやすくなるため、早めの点検が安心です。

⑤ 圧力が安定しない(上がったり下がったり)

「メーターの圧力が上下にふらつく」
「水圧が急に弱くなったり戻ったりする」

このような症状は、給水ユニットでは比較的よく見られます。

特に インバーター制御 のポンプに多い不調です。

原因の例:

  • 圧力センサーの故障
  • インバーター異常
  • 空気混入による圧力変動
  • 逆止弁の不良(戻り流が発生)

圧力センサーとインバーターは、給水ユニットの“心臓部”。

ここが不具合を起こすと、全体が不安定になります。

給水ポンプの寿命・交換時期の考え方

給水ポンプは、建物の水まわりを支える大切な設備ですが、もちろん 永遠には使えません。

突然の故障は“断水”という大きなトラブルにつながるため、管理者としては「どのタイミングで交換すべきか?」をあらかじめ知っておくことがとても重要です。

ここでは、現場で実際によく使われている寿命の目安・交換のサイン・費用感 をわかりやすくまとめます。

ポンプ本体の寿命(10〜15年)

給水ポンプ本体の寿命は、多くのメーカーや現場の経験則から 10〜15年 と言われています。

このくらいの年数になると、

  • モーターの劣化
  • ベアリングの摩耗
  • 羽根車(インペラ)の劣化・破損
  • 軸の摩耗
  • 制御盤や電装部の故障

などの不具合が起きやすくなり、突然の停止が起こりやすくなります。

10年以上経っている設備は、「いつ止まっても不思議ではない」という感覚で点検・更新計画を立てておくと安心です。

メカニカルシールの寿命(5〜7年)

給水ポンプのトラブルで最も多いのが 水漏れ

そして、その原因で最も多いのが メカニカルシールの劣化 です。

この部品が摩耗すると、

  • 軸の付け根から水がポタポタ漏れる
  • ユニット下に水たまりができる
  • だんだん漏水が増える

という症状が現れます。

寿命は5〜7年が目安。

部分交換(メカニカルシール交換)もできますが、ポンプ全体が古い場合は 本体交換の方が結果的に安全 です。

交換費用の目安

費用は建物規模・機種によって異なりますが、一般的な相場は以下のとおりです。

  • 小型給水ポンプ:15〜30万円
  • 中型ユニット型:40〜80万円
  • 大型ユニット:100万円以上もあり
  • メカニカルシール交換:8〜20万円
  • インバーター交換:20〜40万円

マンションや施設の管理者が押さえておくべき点は、

分修理(シール交換)で延命するか?」
「それとも本体交換で根本的に解決するか?」

という判断が必要になる、ということです。


計画的に交換した方がいい理由

給水ポンプは「止まったら困る」設備なので、計画的な更新(10〜15年目) が基本です。

  • 給水停止=クレーム・営業停止につながる
  • 夜間の緊急対応は費用が高い
  • 部品が廃番になり修理できないケースも多い
  • 古い設備ほど“想定外の故障”が起きやすい

特にマンション・クリニック・施設では、止まる前に交換することが最もコストを抑える方法 です。

交換工期の目安は以下の通りです。

  • 単体ポンプ:2〜4時間
  • ユニット交換:半日〜1日
  • 断水を伴う工事は「深夜」「早朝」が多い
  • マンションは事前告知が必要

急なトラブルに見舞われる前に、ぜひ計画的な点検・修理をおすすめします。

給水ポンプのトラブル・交換・点検のご相談は専門業者へ

給水ポンプは、建物のライフラインを支える重要設備です。

「水が出ない」「異音がする」「水漏れしている」などの症状は、放置すると建物全体の断水設備停止につながる可能性があります。

弊社では、

  • 給水ポンプ(単体)
  • 給水ユニット(2〜3台構成)
  • インバーター制御盤
  • メカニカルシール交換
  • 逆止弁・配管まわりの修理
  • マンション・クリニック・中規模施設の給水設備点検

など、あらゆる給水設備に対応しています。

緊急対応・夜間工事・断水伴う工事にも対応可能です。

「水の勢いが弱い気がする…」
「ポンプが古いので不安…」
「交換すべきか点検だけでいいのか判断したい」

という段階でも、お気軽にご相談ください。

給水ポンプの修理・交換・点検のご相談はこちら

プロの技術者が状況を伺い、最適な対処方法をご案内いたします。
(写真や状況を送っていただくだけでも診断が可能です)

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