古いマンションの電気温水器は要注意!よくある不具合や室内置きのデメリット解説
古い賃貸マンションや中古マンションへ引っ越してから、設備トラブルが発生したというケースも多くあります。
設備の中でも「電気温水器の不具合」に悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
馴染みが薄い給湯器ということもあり、対処法がわからないとの声も聞こえています。
そこでここでは
- 古いマンションの電気温水器は要注意!
- よくある不具合や室内置きのデメリット
について詳しく解説します。
これから、古いマンションや中古マンションの購入を検討されている方は、ぜひ、読み進めてください。
古い賃貸・中古マンションの電気温水器でよくある不具合やデメリット
電気温水器とは、電気の力でお湯を沸かす給湯器です。貯湯タンクの中にある電熱ヒーターが水道水を温めて、キッチンや浴室にお湯を給湯します。
電気給湯器は大きな電気ポットのようなものをイメージしてください。
こちらが、一般的な電気温水器(貯湯タンク)の構造です。
火を使わずお湯を沸かせる安全面から、電気温水器を設置しているマンションも増えつつあります。
しかし、中古マンションや古い賃貸に設置された電気温水器は、機械自体が古いものや機能性が劣っている物もあるため注意が必要です。
古い賃貸・中古マンションの電気温水器でよくある不具合やデメリットを具体的に紹介します。
沸きましの時間設定ができない
一般的な電気温水器には、『沸きまし』という機能がついています。
沸き増しとは、お湯が足りなくならないように、減ってきたらその都度お湯を沸かす機能です。
新しいタイプの電気温水器は、お湯を沸かす時間帯を設定し、比較的電気代が安い深夜に限定するなどして、沸きまし機能を活用しています。
しかし、中古マンションや古い賃貸に設置された電気温水器の多くは、旧式タイプの傾向にあり、時間設定ができない機種もあるでしょう。
そうなると、通電時間を制御できず一日中稼働してしまい、電気代が高くなる原因にもつながります。
沸きましに時間がかかる
実は、古いタイプの電気温水器は、沸きましに時間がかかります。
電気温水器は、貯湯タンクに貯まった水を電熱ヒーターで温める仕組みです。
電熱ヒーターには、年数が経つとスケール(水垢)が付着します。
スケールとは、水道水に含まれた塩分/石灰分/その他不純物が個体となって配管などに付着・固化したものです。
電熱ヒーターにスケールが付着すると熱効率が低下し、どうしてもお湯を沸かす時間がかかってしまいます。
時間がかかる=電気代が高くなるということです。
人数次第では湯切れしやすく温度が不安定
一般的に1人が1日に使用する湯量の目安は次の通りです。
- お湯張り1回:約180L
- シャワー1回:約80L(1回8分程度)
- 炊事や洗面1日当たり:約30L
ライフスタイルによって多少の誤差はあるものの、1人1日当たり300L程度のお湯を使用することになります。
一般的な電気温水器は『約75~85℃』程度に熱したお湯と水を混ぜ、キッチンや浴室、洗面所に快適な温度のお湯を供給する仕組みになっています。
そのため、実際のお湯の使用量の目安は、タンク容量のおよそ1.8倍です。
湯量の目安から、使用人数に適した貯湯タンクのサイズは次の通りです。
最適な使用人数 | 貯湯タンクの容量 | 湯量の目安 |
1~2人 | 200L | 350L |
2~3人 | 300L | 590L |
3~4人 | 370L | 670L |
4~6人 | 460L | 750L |
しかし、上記は新しいタイプの電気温水器を対象にしたデータです。
古い賃貸や中古マンションに設置された電気温水器のほとんどは、経年した古い電気温水器になります。
古い給湯器は電熱ヒーターにスケールがこびりつき、沸き上がる湯温が不安定になり、供給できるお湯の量も少なくなります。
そのため、人数次第では湯切りを起こす可能性があります。
水圧が不安定・異音やぬる湯のトラブルも
水圧が不安定
年数が経った電気温水器は、逃し弁の故障によって水圧が不安定になるケースが多くみられます。
逃し弁とは、貯湯タンクの圧力が高くなると、安全を守るために圧力を逃がすものです。
こちらは、三菱電機「電気温水器」の取説に掲載された、逃し弁の図解になります。
逃し弁の故障は水圧に影響するだけでなく、水漏れの原因にもなるため注意しましょう。
異音が聞こえる
電気温水器から「カラカラ」や「キーン」という異音がする場合、電気温水器の故障や不具合の可能性があります。
カラカラという異音は、配管内の部品が破損している可能性もあります。
また、キーンという異音は、配管内の水圧が高くなったとき、配管内の壁に水がぶつかて発生する『ウォーターハンマー』と呼ばれるものです。
このような異音を放置していると、電気温水器の故障や配管の破損に繋がりますので、ご注意ください。
お湯がぬるい
日中などにお湯を使い過ぎると、タンク内のお湯が足りなくなり、ぬるいお湯しか出なくなってしまうケースもあります。
この場合、電気温水器が新しくお湯を沸き上げるのを待てば解決します。
しかし、お湯がぬるい原因には「電気温水器の故障」も考えられます。
電気温水器から水漏れが発生した場合、使っていないのに湯切れを起こし、ぬるいお湯が出てくる原因にもつながります。
お湯が出ない・出にくくなる
お湯が出ない原因は主に3つあります。
1つ目は水道管のトラブルです。この場合は、蛇口をひねっても水とお湯の両方が出なくなります。
水が出ない原因には、断水・水道管の破損・凍結などが考えられます。
しかし、水は出るがお湯だけ出ないケースは、電気温水器の問題と考えて良いでしょう。
お湯が出ない原因の2つ目は、電気温水器本体の問題です。
お湯が出ない場合、電気温水器の本体についている『漏電遮断器』が切れている可能性もありますので、本体を確認してください。
漏電遮断器は電気温水器の本体についています。
漏電遮断器がOFFになっていたら、電源をONにしてください。
3つ目は止水栓が閉じているケースです。
電気温水器には、専用の『止水栓(給水栓)』が付いています。
こちらは、三菱電機の電気温水器についている止水栓の図解です。
この止水栓が閉じているとタンク内に水が供給されず、電気温水器からお湯が出ない原因にもつながります。
4つ目は貯湯タンクの湯切れです。
貯湯タンク内が湯切れを起こしていると、お湯が出にくくなります。
上記いずれにも該当しない場合は、減圧弁の問題かもしれません。
5つ目は、減圧弁の動作の問題です。
減圧弁は、貯湯タンクの許容圧力以下に給水圧を常に減圧しています。
こちらが、丸型電気温水器の減圧弁の図解です。
出典:三菱電機
この減圧弁がうまく作動しないことで、お湯が出ないというトラブルが起こります。
また、減圧弁には減圧以外にも3つの役割があり
- 配管内のサビや異物の流入を防ぐ
- 電気温水器の逆流を防止
- 減圧弁には水抜き栓があり凍結を防ぐ
という大きな役目を担っており、減圧弁の破損によってお湯が出ない・出にくくなるというトラブルが起きている可能性もあります。
しかし、減圧弁の故障は素人では判断できません。管理会社かメーカーに相談しましょう。
室内置きの場合は水漏れで床が水浸しになる
電気温水器はタンクの中に水を貯め、お湯を作る構造になっています。
生活に必要な湯量を作るとなれば、貯湯タンクはそれなりの容量が必要です。
一般的な電気温水器には『角型』と『丸型』の2つのタイプがあります。
こちらは、三菱電機が販売している電気温水器の一部です。
一般的な賃貸物件には、貯湯タンクを設置できるパイプシャフトを設けており、その中に電気温水器を置いています。
パイプシャフトに設置された丸型電気温水器の一例。
しかし、古い賃貸や中古マンションの場合、電気温水器専用の室外スペースを設けてない物件もあります。
そのような中古マンションでは、室内置きするケースも珍しくありません。
こちらは、部屋に設置された角型電気温水器の一例です。
室内に設置する場合、キッチンや洗面台の横といった、水回りの近くに設置することになります。
スペースの問題上、室外に設置できない場合は室内に置くしかありませんが、室内に導入された電気温水器にはデメリットがあります。
実は、電気温水器から生じた水漏れが原因で、室内が水浸しとなり、床や家具、電化製品が破損することも珍しくありません。
また、水漏れを何年も放置していると、床が腐敗する原因にもなります。
その場合には、例え賃貸物件であっても借主の過失となり、修理代を負担する可能性もあります。
さらに最悪のケースでは、下階に水が流れ、水漏れトラブルが発生した事例もありました。
室内置きの場合は部屋が暑いことがある
電気ポットのような構造をしている電気温水器。室内置きの場合、部屋が暑くなるのでは?と不安な方も多いようです。
最近の電気温水器は、周辺や室内が暑くなることはありません。
しかし、古い型式の電気温水器は、熱がこもって室内が暑くなるケースもあるため、注意が必要です。
古いマンションの室内にある電気温水器の注意点
メーカーが基本基準に挙げている電気温水器の説明によると、「1日2時間の使用で10年は使用できる」とされており、一般的な平均寿命は10~15年と言われています。
しかし、賃貸マンションや集合住宅には「空室期間」というものがあり、空室のあいだは電気温水器は稼働しないため、総合的にみて長持ちしやすい傾向にあるでしょう。
古いマンションの室内に設置された電気温水器は、かなり昔に製造された機種の可能性が高いです。
具体的には、20年くらい前の電気温水器を使っているという事例もありました。
古い型式の電気温水器は、いつ故障してもおかしくありません。水漏れが原因で、室内が水浸しになることも想定できます。
また、古いタイプの電気温水器は伝熱効果も低下し、毎月かかるランニングコストは割高になる傾向です。
一般的なメーカーのモデルチェンジは10年とされており、給湯器の製造が中止されてから10年後には部品供給の義務がなくなります。
そうなると、例え故障しても部品の欠品により、修理が不可能なケースもあるため注意が必要です。
新品に交換するとしても、すぐには対応してもらえず「1ヶ月以上お湯が使えなかった」という事例も起きています。
トラブルを回避する策としては、古いマンションを借りるときは、電気温水器の型式や年式にも注視しましょう。
製造から15年以上経過した電気温水器は、例え稼働していたとしても、避けた方が良いと言えるでしょう。
電気温水器の交換は費用が高くなりがち
中古マンションを購入し、いざ入居してみたら電気温水器が故障した。というケースも増えています。
古い賃貸に設置された電気温水器に問題が生じても、借主の判断で交換することはできません。
また、中古マンションを購入した場合、電気温水器にデメリットを感じたとしても、配管や建物の構造上、他の給湯器へ交換する費用が高くなりがちです。
元々設置されていた室内置きの電気温水器は、新たな物と交換しても、室内に設置するのが無難と言えるでしょう。
ただし、室内型の電気温水器を取り扱う店舗は少なく、設置までに2~3ヶ月以上待つことになりそうです。
中古マンションの価格が相場と比べてあまりにも安い場合は、電気温水器の問題を疑った方が良いかもしれません。
せっかく安値でマンションを購入しても、後の修理代や交換に多額の費用がかからないよう、給湯器の見極めには注意しましょう。
いずれにしても、お湯は毎日の生活に欠かせないものです。
古い賃貸物件や中古マンションを選ぶ際は、電気温水器のデメリットも踏まえ、慎重に検討してください。