泉質・温度に強い温泉配管の材質は?主要素材の特徴からポリエチレン管のメリットまで解説
「温泉配管に採用される配管素材にはどんなものがある?」
「泉質や温度に強い温泉配管の材質はどれ?」
そんな疑問を解消するための記事です。
温泉配管の寿命を延ばし、将来の修繕費を劇的に減らす鍵は、「館内は直しやすさ」「地面の下は漏れにくさ」という適材適所の使い分けにあります。
この記事では、現場で最も使われているHT-VP管のリアルな弱点から、最近リニューアル工事で採用が増加している「ポリエチレン管」のメリットを解説します。
温泉ごとに泉質は千差万別であり、実際にはプロと相談しながら素材を選択していくのが一番確実ですが、施設管理者として最低限の基本をおさえておくことで、適切に対応していくことができます。
不要な出費やトラブルを避け、適切に対処するためにも、ぜひ最後まで読んでみてください。
温泉配管の寿命を縮める「3大攻撃因子」とは
温泉施設の運営において、配管トラブルは避けて通れない課題です。
多くの現場で起きる配管トラブルの主な原因は次の3つに整理できます。
- 化学的腐食(塩素イオンや硫化水素による腐食)
- 熱膨張(高温泉による樹脂の熱膨張・変形)
- スケール付着(成分結晶化による管内閉塞)
温泉配管の寿命は「化学的腐食」「熱膨張」「スケール付着」への対策ができているかどうかで大きく変わります。
金属をボロボロにする「化学的腐食」の恐怖
温泉水は、一般的な水道水とは比較にならないほど多くのイオン成分を含んでいます。特に注意すべきは「塩素イオン」と「硫化水素」です。
これらは金属材料に対して強力な酸化作用を及ぼし、一見頑丈そうな鉄管やステンレス管であっても、目に見えない小さな穴を開ける「孔食(こうしょく)」を引き起こします。
特に鉄やマンガンが多く含まれる泉質では、腐食スピードが加速し、赤水の発生や漏水の直接的な原因となります。
まずは施設の「泉質分析表」を確認し、これらの腐食因子がどれだけ含まれているかを把握することが、正しい材質選びの第一歩です。
| 腐食因子 | 影響を受ける主な材質 | 発生する主なトラブル |
| 塩素イオン | ステンレス鋼・炭素鋼 | 孔食(点状の穴)、隙間腐食 |
| 硫化水素 | 銅・銅合金・鉄 | 全面腐食、硫化による脆化 |
| 硫酸イオン | 鋼管・コンクリート管 | 酸性腐食による減肉 |
樹脂管の大敵「熱膨張」と「物理的負荷」
耐食性に優れる樹脂管(HT-VPやポリエチレン管)を採用する場合、次に立ちはだかるのが「熱」の問題です。温泉の温度が高くなればなるほど、樹脂は柔らかくなり、強度が低下します。
さらに深刻なのが「熱膨張」です。樹脂管は金属管の数倍から十数倍もの線膨張係数を持っており、温度が上がると目に見えて管が伸びます。
この伸びを適切に逃がす設計(伸縮ソケットの設置や支持方法の工夫)がなされていないと、管が蛇行して支持金具から脱落したり、接合部に過度な負荷がかかって破断したりする事態を招きます。
供給をストップさせる「温泉スケール」の固着
材質が腐食に強く、熱対策も万全だったとしても、最後に施設管理者を悩ませるのが「スケール」による閉塞です。
温泉に含まれるカルシウムやシリカなどの成分が、温度や圧力の変化、pHの変動によって結晶化し、配管の内壁にカチカチに固着します。
これが進むと、ポンプに負荷がかかり燃料代が跳ね上がるだけでなく、最終的にはお湯が全く出なくなる「完全閉塞」に至ります。
ここで重要なのは、材質選びと並行して、後述する「物理的抑制装置」などの予防策をあらかじめ組み込んでおくことです。
温泉配管に採用される主要素材のメリット・デメリット
温泉配管にはさまざまな材質がありますが、旅館の現場で目にするものは大きく分けて3種類です。
これまで主流だった「安くて手軽な茶色のパイプ」に加え、最近では「地震や漏水に強い新しいタイプ」が注目されています。
現場の目線でいくと、「建物の中は安くて直し勝手の良いHT-VP」、「地面の下は漏水リスクの低いポリエチレン管」という使い分けが、一般的と言えます。そして、一部の特殊条件下で稀にFRP管が使われるケースがあります。
- HT-VP(耐熱塩ビ管):安さと修理のしやすさで選ぶ「館内の定番」
- ポリエチレン管:地震対策と漏水ゼロを目指す「地面の下の主役」
- FRP・FW管:源泉井戸など過酷な場所を支える「プロの特殊材」
圧倒的な普及率!安さと手軽さの「HT-VP(耐熱塩ビ管)」
老舗旅館の多い温泉地の床下や裏庭などで見られる一般的な温泉配管は、HT-VP(耐熱性硬質ポリ塩化ビニル管)です。
最大のメリットは、何といっても「経済性」と「直しやすさ」です。
材料費が安く、専用の接着剤でつなぐだけというシンプルな施工方法のため、地元の水道屋さんであればどこでも修理が可能です。突発的なトラブルが起きてもすぐに対応できるという安心感は、宿泊客を抱える旅館経営者にとって大きな魅力です。
ただし、熱で伸び縮みしやすい性質があるため、しっかり固定されていないと配管が歪んでしまう「蛇行」が起きやすいのが難点です。
また、接着剤の塗りすぎや冬場の衝撃でポロッと割れてしまう脆さもあるため、丁寧な施工が求められる材質でもあります。
| 項目 | 特徴 |
| 主な用途 | 旅館の館内配管、浴室周り、露出配管 |
| メリット | 初期費用が最も安い。どこの業者でも修理可能。 |
| デメリット | 熱による変形が大きい。衝撃に弱く、割れることがある。 |
地震に強く漏水しにくい!期待の星「ポリエチレン管」
「一度地面を掘って埋めたら、もう二度と掘り返したくない」。そんなオーナー様の切実な願いに応えるのが、近年採用が急増している「ポリエチレン管(PE管)」です。
最近、多くの宿がHT-VPからこちらに切り替えている最大の理由は「リスク管理」にあります。この管は非常にしなやかなため、地震で地面が揺れても折れたり抜けたりすることがほとんどありません。
さらに、数百メートルの長さを「一本の長いホース(長尺)」の状態で敷設できるため、地面の下につなぎ目(弱点)をほとんど作らずに済みます。
「どこから漏れているかわからないが、水道代が跳ね上がっている」という目に見えない漏水の悪夢から解放されたいのであれば、ポリエチレン管は最も信頼できる選択肢となります。
- 地震に強い:しなやかに曲がるため、地盤沈下や震災でも折れにくい。
- 漏水リスク激減:つなぎ目が最小限で済むため、経年劣化による接合部からの漏れを防げる。
- 冬に強い:凍結しても割れにくい特性があり、寒冷地の露天風呂配管にも最適。
源泉井戸や高圧ラインを支える「FRP(強化プラスチック)管」
旅館の建物内ではあまり馴染みがありませんが、温泉を汲み上げる井戸や、高い圧力がかかるメインの送湯管などで活躍するのが「FRP管」です。
これは熱を加えても溶けない「熱硬化性(ねつこうかせい)樹脂」で作られており、一度固まると非常に頑丈で、熱による伸び縮みも少ないのが特徴です。
非常に高価なため、FRPが採用されるシーンは多くないですが、泉質や設置条件によっては「絶対に壊れてはいけない心臓部」にだけピンポイントで採用されることもあるプロ向けの素材です。
- 過酷な環境に強い:100℃近い高温泉や、地下深くの強い圧力にも耐える。
- 歪まない:熱による伸縮が少ないため、過酷な環境下の配管に向いている。
温泉設備で「あえて金属」を使う代表的な場所とその注意点
温泉地では「金属は錆びて当たり前」ですが、それでも樹脂管(HT-VPなど)ではなく、あえてステンレスや鋼管を使わなければならない場所があります。
- ボイラー・熱交換器の周り:高温・高圧で樹脂では耐えられない箇所
- 機械室のポンプ周辺:振動や衝撃が加わり、樹脂では割れる恐れがある場所
- バルブや継手などの「可動部」:精密な制御が必要なパーツ
こうした「要所」で金属を使う際の、トラブルを防ぐための注意点は次のとおりです。
金属を使うなら「泉質との相性」を再確認する
機械室の心臓部など、熱や圧力がかかる場所で金属を採用する場合、最も注意すべきは「錆びる」ことそのものよりも、その「壊れ方」です。
特にステンレス管の場合、全面が錆びるのではなく、塩素イオンによって「目に見えない小さな穴」が突然開くのが厄介な点です。
樹脂管のトラブルが「歪み」や「外れ」であるのに対し、金属管は「突然の噴水」になりがちです。
事前に意識しておくべき対策や注意点は以下のとおりです。
- 塩素イオン濃度に注意: 200mg/Lを超える泉質でステンレスを使う場合は、数年単位での「消耗品」と割り切るか、より高耐食なグレード(SUS316Lなど)への格好を検討してください。
- 鉄管(SGP)の錆コブ: 鋼管を使用する場合、内部にできる「錆コブ」が温泉スケールを捕まえるフックになり、閉塞を早めます。定期的な通水量のチェックを欠かさないことが大切です。
異種金属の接触による「電食」を防ぐ
金属管を使用する際、意外と見落としがちなのが「異なる種類の金属」をつなぐ場所です。例えば、ステンレス管と銅合金のバルブを直接つなぐと、微弱な電気が流れて一方の腐食を劇的に早める「電食」が起こります。
温泉水は電気が通りやすいため、この現象が顕著に出ます。金属管を組み込む際は、必ず絶縁のためのパーツ(絶縁フランジやブッシュ)を挟み、金属同士が直接「ケンカ」しないように配慮することが、設備の寿命を数年単位で延ばすコツになります。
結局、どれがいい?温泉配管の「現実的な」選び方
温泉配管の正解は、一つではありません。しかし、現場の肌感覚とコスト、そして将来のリスクを天秤にかければ、自ずと「選ばれやすい組み合わせ」は存在します。
- 館内(見える場所):HT-VP(耐熱塩ビ)が経済的
- 埋設・引湯(見えない場所):長尺ポリエチレン管が安心
- 特殊な要所:FRPや金属管をピンポイントで
上記はあくまでも一例であり、実際には泉質や運営体制を考慮し決定する必要があります。
とはいえ、通常、「建物の中はHT-VPでコストを抑え、修理のしやすさを確保する」。そして、「地面の下や長距離の引湯は、漏水リスクを断つためにポリエチレン管を選ぶ」。このような使い分けで選択されるのが一般的です。
建物内(館内)の配管:コスト重視ならHT-VP、安心重視ならポリ管
旅館の建物内は、お風呂場や洗い場、客室へと枝分かれが多く、非常に複雑な配管になります。
ここで重要なのは「施工のしやすさ」と「万が一の時の直しやすさ」です。一番経済的なのは、やはりHT-VP(茶色のパイプ)です。現場で細かく切ってつなげる「短尺(たんじゃく)」の作業に向いており、万が一漏水しても地元の水道屋さんがすぐに駆けつけて直せる強みがあります。
一方で、最近は館内でもポリエチレン管を採用する宿が増えています。これは、接着不良による「抜け」や、地震での「割れ」を極限まで減らしたいという安心への投資です。
- HT-VPを選ぶなら: 8mごとの伸縮ソケットを省略しないこと。
- ポリエチレン管を選ぶなら: 露出部に紫外線対策のカバーを忘れないこと。
外の地面の下(引湯・埋設):継ぎ目のない「長尺ポリエチレン管」も選択肢のひとつ
オーナー様にとって最も怖いのは、地面の下で起こる「原因不明の漏水」ではないでしょうか。一度埋めてしまえば、どこから漏れているかを探すだけで膨大な時間と調査費用がかかります。
そのため、地面の下や長距離の引湯には、絶対に「長尺(ちょうじゃく)のポリエチレン管」が選ばれやすくなっています。
一本の長いホースのように敷設できるため、漏水の原因となる「つなぎ目」そのものを地面の下から無くすことができるからです。
「HT-VPの方が材料費は安い」と業者に言われるかもしれませんが、10年後に地面を掘り返して修理する工賃を考えれば、ポリエチレン管も現実的な選択肢のひとつといえます。
スケール対策:良い材質を選んでも「出口」のケアは不可欠
どんなに高価な材質を選んだとしても、温泉である以上「スケールの固着」だけは物理的に避けられません。配管の材質選びとセットで考えるべきは、スケールを「詰まらせない運用」です。
最近では、配管を切らずに外側から設置できる物理的抑制装置や、温泉成分を変えずに結晶化を防ぐ装置も一般的になっています。
「管を新しくしたから安心」で終わらせず、こうした装置を併用して清掃の回数を減らすことが、結果として配管の内壁を傷めず、寿命を最大限に延ばすことにつながります。
温泉施設に最適な「配管セット」の考え方
この記事のまとめとして、旅館オーナー様が取るべきアクションを整理しました。
- まずは「泉質分析表」をチェック: 塩素イオンが多いなら、金属管への過度な期待は捨てる。
- 場所で材質を分ける: 館内は「直しやすさ(HT-VP)」、外は「漏れにくさ(ポリ管)」を念頭に。
- 施工品質を確認: 樹脂管の天敵である「熱膨張」の対策(伸縮ソケットなど)が見積もりに入っているか確認する。
温泉配管は、宿の「血管」です。目先の安さだけでなく、20年後のメンテナンス風景を想像しながら、信頼できるパートナー(施工業者)と最適な材質を選んでください。
「突然の営業停止」という最悪の事態を防ぐために。
配管の詰まりやポンプの異変は、温泉施設の心臓部が悲鳴を上げているサインです。
完全閉塞による高額な修繕や、突然の故障による休業に見舞われる前に、プロによる定期的な「健康診断」をおすすめします。
当社は、ボイラーを強みとしており、温泉施設の修繕・点検の実績もございます。
九州エリア(一部除く)なら最短15分で駆けつけ可能。ぜひ一度ご相談ください。



